以下、後日譚になる。
一誠は休学していた大学に復学したものの、やはり違和感だけはぬぐえなかったようで、父親の一周忌を待って、その間に学費に窮し退学したあと相続や税金の手続きを済ませてから、新幹線で再び東京を目指した。
それまでに付き合ったのは由美子であった。
カナに新しく彼氏が出来て二人で会うことが増えたのがきっかけであったが、この一事が理由で一誠と泉は決裂したのである。
由美子と交際が始まると、一誠はやがて由美子が独り暮らしをしていたマンションで半同棲をするようになった。
「父親がおらんだけで内定が決まらんの理不尽や」
と言いながら、由美子とは穏やかに過ごしていたが、やはり居心地の悪さは感じていたようで、
「由美子にはもっと幸せな相手がおるんやないかなぁ」
と言うと、一誠は大阪を出た。
横浜の鶴見で間借りしながらもバイク便の仕事を見つけ、横浜の道路を覚え始めた頃、風の便りで由美子が亡くなったことを知った。
しかし。
それはもしかしたら自分が由美子を捨てたからかも知れないと感じたとき、大阪へ帰ることを一誠は躊躇した。