菜々子はグラスを手に、

「私は先輩にひさびさに逢えたんで嬉しかったですけどね」

「そうやって媚び売って稼げるんだから、生まれ変わるなら女がいい。札束積まれたって男なんか生まれ変わるのはまっぴらだ」

 翔馬は酒の勢いに任せて暴言を浴びせた。

 菜々子は一瞬、言葉に詰まったが、

「…先輩、何かあったんですか?」

 翔馬の隣に座ると、顔を覗き込んだ。

「遭ったなんてレベルじゃない。社長の娘には振り回されるわ、送別会だから手伝えって朝から駆り出されて、どうせ残業代だって出ないし」

 明日辞表出すからもういいんだ、と翔馬は半ばヤケ気味にグラスをあおった。

「綱島、こんな先輩で残念だったな。そこらへんのイケメンでも捕まえて幸せに暮らせよ」

 翔馬は席を立つと、そのままトイレへ向かった。