準備から何から、朝早くから下働きのようにあちこち働かされていた翔馬は、ようやく広間の隅で息をついていた。

 そのとき、

「辻先輩…ですよね?」

 うなだれていた翔馬が見上げると、そこにはなぜか、大学のときの三年後輩にあたる綱島(つなしま)菜々子がいた。

「綱島…なんでいるんだ?」

「パーティーのコンパニオンとして呼ばれたんです」

 お酌や会話のための要員らしい。

「このバイト、結構稼げるんですよ」

 微笑む菜々子に、翔馬は少しだけ複雑な顔をした。

「こんなみっともない姿を綱島に見られて、こんなんだったら就職なんかするんじゃなかった」

 いつわらざるところであったかも分からない。