しばらくして、翔馬と菜々子は光に弘明寺まで招待された。
「私のフィアンセを紹介します」
というのであらわれたのは、高そうなスーツをパリッと着こなした、秀麗な顔立ちの青年である。
「留学時代に知り合った」
という青年と、六月には挙式をするのだという。
「あなた方は式は?」
「うちらは写真だけにしました」
「…何か辻さんらしいわね」
一頻り世間話をして、二人は光の家を出た。
「…あ、桜」
菜々子はシンボルの普賢象を見上げた。
「うちらのしあわせってさ、きっとこうやって一緒に花を見たり弁当食べたり、そんな感じなんだと思う」
しばらく翔馬と菜々子は散り降る桜を眺めていた。
が、
「帰ろっか」
「うん」
翔馬と菜々子は駅へ続く坂道を、手を繋いで降りていった。
【完】