菜々子は翔馬の痛々しい姿を、なすすべもなくはじめは遠巻きに見るより他ないのかとも思っていたらしい。

 それでも、

「俺…やっぱり三次元の子を好きになったらダメなのかな」

 ポツリと言ったまま瞼を閉じると、翔馬の目から一筋の涙が伝い落ちていく。

「いつか、ちゃんとあらわれますから」

「いや…もう二次元だけでいい。仮に綱島が彼女なんかなってみろ、今度は綱島までいなくなる」

 それこそ耐えられない──翔馬は学生時代から、少し風変わりながら頭の回転は早く、それで菜々子も幾度となく助けられてきた。

 それだけに翔馬は見切るのも早く、逆に諦めも早い。

 そのためもう少し頑張れば結果が出るのに、止めてしまうところがある。

 したたかに痛飲した翔馬は、気づけば眠ってしまい、

「…しょうがないな」

 呼んでもらったタクシーの運転手の手も煩わせながら、川崎新町までつく頃には、すでに日付も変わっていた。