菜々子は震えていた。 「…私だって希ちゃんのこともあるけど、翔馬先輩に何か遭ったら…もう耐えられない」 そこは菜々子の本心であったろう。 菜々子にそこまで言われては、翔馬も動くことは難しかったらしく、 「…夜が明けるのを、待つしかないのか」 篠つく土砂降りを睨むように翔馬は眺めながら、 「神は、俺に悪意しかないようだな」 小さく吐き捨てると、泣き崩れた菜々子の肩に手をやり、なだめるように髪を撫でた。