深夜。 菜々子からLINEで、無事に六角橋まで着いた旨だけは知らされた。 「…雨か」 折から雨脚は強い。 雷すら遠くで聞こえてくる。 「そう言えば、あの日も雨だったよな…」 一瞬だけよぎるものはあったが、すぐさまそれを振り払うかのように首を思い切り振って、 「…さとみじゃない、希だ」 何か、底知れないものを払い退けるように、みずからへ言い聞かせようとしていたのかも分からない。