翔馬は光を組み敷いたまま、
「俺は誰も怒りたくないし、誰とも戦いたくもないし、争いたくもない。だからこれ以上、逆撫でするのは…やめてもらえないかな」
それまで光が見たこともなかった、悲し気な色のこもった目で翔馬は言った。
「ましてや感情に任せて女を襲うなんて、そんなのは野獣のすることで、俺がするべきものではない」
そこで初めて、組み敷いていた躰を解いてから翔馬は光を柔らかく抱き締め、
「…悪かったな」
髪を撫でた。
この優しい挙措があるから、いわゆる恋愛のスイッチの入った状態になってしまうのでは──光は抱き締められながら感じていた。