菜々子を六角橋まで送り届けたあと、川崎新町まで再び帰ると、黒塗りの車があった。

 中では光が待っていて、

「翔馬ってバイク乗るの?」

 そういえば通勤にはしばらく使っていなかったので、光は知らなかったらしい。

「…誰かとデート?」

「大学の後輩に相談があってね」

「その後輩、もしかして女の子じゃなくって?」

 光は核心をつくのが上手い。

「だって、香りが」

 菜々子のフレグランスの匂いか何かで分かるようである。

「あなたはただの女たらしですか?」

「…ずいぶん嫉妬深いんですね、光お嬢さま」

 翔馬は平静なままである。

「なっ、何を急に…」

 光はうろたえた。