さとみには迷惑ばっかりかけてたし、と翔馬は、

「だからあいつがいなくなったあと、さすがに引きずっちゃってさ」

 菜々子は翔馬の腰に腕を回し、

「私、実はずっと先輩のこと好きだったんです」

「…えっ」

「だけど今は、想いが叶わなくたって、ずっとそばでいられたらいいやって」

「綱島…」

「だからこないだのパーティーのとき、あんなこと言われてすごく悲しかった。でも、さとみ先輩のこともあったから、私…怒れなかった」

 坂を下ると、海が見えてくる。

「ホントは先輩は優しくて、情に厚くて、男らしいところもあって。だからさとみ先輩が羨ましかった」

 菜々子は翔馬に強くしがみついた。

「…私からは、先輩から離れたり消えたりしないんで、安心して下さいね」

 菜々子は共にいるだけで満足であったようである。