六角橋のアーケードの入り口で菜々子と待ち合わせると、予備のヘルメットを菜々子に渡し、 「…何か終電逃したときのことを思い出すなぁ」 菜々子がまだ西鎌倉の実家にいた頃、終電に間に合わなかったときには、キャンパスから近かった翔馬がタンデムで送ったことがあった。 「あの頃、さとみ先輩が羨ましかったなぁ」 リアシートに座った菜々子は言った。 「さとみ…か。いなくなってから、何年だっけ?」 「まだ翔馬先輩が卒業してすぐだから、八年ぐらいかな?」 翔馬は鎌倉街道を目指していた。