最初は少しぎこちなかったクラッチペダルの捌き方も、慣れてくると体が思い出したようで、

「今度から通勤でも使うか」

 次の春から営業に配属が変わる。

 浦賀までこの日は遠乗りをかけ、海でぼんやりとしていた。

 夕方に川崎新町まで戻ってスマートフォンを開くと、菜々子からメッセージが来ていた。

 つい数分前なので返した。

 すぐ返事が来た。

「綱島の家、確か六角橋だったよな?」

「うん」

「ひさびさにバイク乗っててさ。今から行く」

「また前みたいに、後ろに乗せてもらっていいですか?」

「タンデムぐらいなら良いよ」

 その足で翔馬は六角橋を目指した。