光はしばらく翔馬の腕にもたれ、目を閉じたまま黙っていたが、

「…もう、帰らなきゃ」

 光はそれまで見せたことのない、潤んだ眼差しで翔馬をじっと見つめてから、

「今日はありがと。もっと早く気づけばよかったのかも知れないけど、でもあなたが優しい人なのは分かった。私の目は曇ってなかったみたい」

 光は翔馬を抱き締めたまま、

「…少し臆病なところ、私は嫌いじゃない」

 そう言うと光はすっと離れ、この日は帰っていった。