それでも光は、翔馬が光のそれまで知らなかった世界を知っていることに、関心はあったようで、

「あなたは私が留学までしたのに分からなかったことを、アニメを通して知っている」

 なぜ教えてくれなかったのかを問うた。

「だって…訊かれなかったから」

 翔馬の答は明快であった。

「…腕を組むぐらいは、許してもらえる?」

 翔馬は何も言わない。

 無言で光は、翔馬の左腕にみずからの腕を回した。

「いつも右腕だから、なんか新鮮だなぁ」

 左利きの翔馬は、腕を組むときも手をつなぐときも、常に右腕でそれをする。

 当然、希はそれを知っていて、気を遣うようにして翔馬の右手をつなぐ。

「私は宮崎希と同じことはしない」

 意地なのか矜持なのか、左腕を離そうとはしない。