とりあえずとばかりに翔馬は、買い溜めしてあったレトルトのキーマカレーを光に出した。

「いくらお嬢さまでも、カレーは食べたことあるでしょう」

 光はかぶりを振った。

「…いただきます」

 古道具屋で買い叩いた、安手の有田焼のカレー皿が妙に違和感を醸し出す。

「俺も食べよ」

 別皿のカレーを食べながら観たのは、録画したものではなく、内容的に翔馬が気に入っている『響けユーフォニアム』のDVDであった。

 何度か翔馬は観ているので何も感じなかったが、隣の光は初めて観たらしく、特に卒業前の先輩と後輩のやり取りのシーンでは、グズグズに泣きながらアニメに釘付けになり、カレーを食べている。

「こんな素晴らしい作品があるなんて、知りませんでした」

 光は鼻をグスグスいわせながら、

「あなたはやっぱり、私の予想以上の男性でした」

 宮崎希があなたに目をつける理由が分かりました──と変な納得をしたようで、

「もし私があなたの理想の女性になったら、どうしますか?」

 翔馬はどう読解してよいやら分からなかった。