翔馬は相手が怒れば怒るほど、冷徹になるところがある。
「それは単にアイドルだから、ですかね? 何か裏がありそうで、…もしかしたら、彼女がいると光お嬢さまは不利益をこうむるとでも?」
「彼女は、海士部組とライバル関係の建設会社の社長の一人娘です」
どこでどうやって、たぶらかしたのだか──光は口が滑った。
「少なくとも俺が知る限りの宮崎希は、光お嬢さまがいうような子じゃない」
「だけど、あの子が辻さんをパーティーからお持ち帰りしたって…」
翔馬の目つきが変わった。
「そういうのを、下衆の勘繰りって言うんです」
冷静なまま、まるで刺し貫くような冷ややかな言い方で、翔馬はしたたか言い放った。
光はぐらついたように見えた。
「光お嬢さまでも、言って良いことと悪いことがある」
「…そうね。他人の色恋沙汰に口なんか挟んじゃいけなかったわよね」
光は負けを認めた様子で、引き下がるように廊下を寂しげに戻っていった。