希のお気に入りの場所は、茅ヶ崎の端にあるキャンプ場がある海岸であった。

「ここにはよく家族で来てたんだけど…あのね、私パパとは血が繋がってないんだ」

 希はおそらく、ファンの前では笑顔と夢を振りまいているのかも知れない。

 しかし目の前の宮崎希は、一人の大学の一回生であり、真っ直ぐに気持ちをド直球で投げ込んでくる、不器用ながら心が揺さぶられる存在でもあった。

 そんな駆け引きのない希に、翔馬はどう応えるべきであるか、いつも考えさせられてしまう。

「もしかしたら希さんが、いちばん一途なんだと俺は思う」

 抱き締めるかキスをするぐらいしか出来ないが、それでも翔馬としては、ひたむきな希には心を動かされていた。