川崎駅で待ち合わせた菜々子と翔馬は、翔馬が行き付けにしているお好み焼き屋へ入った。

「大将、いつものネギ焼きとスパークリングワイン」

「そちらの美人さんは?」

「私は梅酒ハイで」

 小上がりに座ると、菜々子はスマートフォンの電源を切った。

「実は先輩に相談があって…」

「金は貸さない主義だぞ」

「お金は今のところ大丈夫です」

「で、相談って?」

「今のコンパニオンの仕事、辞めようかなって」

 タンブラーを持つ翔馬の手が止まった。

「稼げるから良いって言ってたろ」

「でも…仮に好きな人ができたら、なんだって引け目を感じる場合って、先輩はありませんか?」

 翔馬は少し考え込んだ。