とりあえず会社へは「昨日どうも財布を紛失したので、ホテルに寄ってから出勤します」と連絡を入れてから、

「ところで…ここは?」

「私の部屋だよ」

 翔馬は頭を抱えていた。

「へぇ…イケメンでもお酒で失敗するんだ」

 まるでからかうように、可愛らしくクスクス笑い出した。

「でも昨夜は私に優しかったよね」

 どうやら、することはしたらしい。

「…ごめん、どうしても名前が出てこない」

「降参?」

 翔馬はうなだれた。

「私ね、(のぞみ)っていうんだ」

 それでも思い出せない。