翔馬は胸中かなり焦り始めている。

「多分、名前を思い出そうとしてませんか?」

 翔馬は図星を射抜かれた。

「とりあえず出勤しなきゃ。遅刻してしまう」

「海士部組を辞めるんじゃないの?」

 酔った勢いで女に口を滑らせたらしい。

「だったら、うちの婿に来てくれる?」

 どこかの企業の幹部あたりの娘であるらしいのだが、まるで記憶にない。

「パパがね、あなたの働いてる様子を見て、あれなら私の婿にしていいって言ったから連れて来たの」

 翔馬はますます訳が分からなくなってきた。