だが、そんな甘い想像は、一人の転校生によって霧散することになる。
 1学期の途中で編入してきた渡来(わたらい)雄輝(ひろき)は、背も高くがっしりとした体つきの帰国子女だった。エリート校に編入できたのだから、それなりに優秀なのだろうとは思っていたが、見ためが体育会系なので、クラスが同じになっても、僕は彼のことをまるでチェックしていなかった。
 そして、1学期の期末テストの結果が発表された時、僕は己の目を疑った。

 1学年 1学期 期末試験成績発表(13教科合計)

 1位 渡来 雄輝   1255点
 2位 小島 直人   1210点
 3位 下里 悠也   1203点

 さ、3位!? 2位ではなくて、3位?
 慌てて横にいた小島を見ると、信じられない気持ちは同じらしく、手にした参考書を取り落として、クラスメートの同情を一身に集めている。
   
 片や僕には、誰も快感のスパイスである同情を向けることはなく、3位だって?頑張ったじゃないかと、肩をぽんぽんと叩いてくる始末だ。
 何てことをしてくれたんだ!と渡来を睨むと、こちらに目を向けていたらしい彼とバッチリ視線が合い、思わず仰け反った。