「それで……なんだよ、お前の条件は。オレができることしかダメだからな」


 市野瀬くんは少し焦ったような様子でそう言った。


「簡単なことだから安心して」


 市野瀬くんを安心させようと、そう言ったつもりが。


「だからなんだよ‼ 早く言えよ‼」


 市野瀬くんのことを余計焦らせてしまったみたいで。


 だから。


「……友達」


 簡潔に言った。


「え……?」


 簡潔過ぎてしまった。


 市野瀬くんの周りに、はてなマークが浮かんでいた。


 だから。


「友達になってほしいの」


 もう一度きちんと言った。


 きちんと言ったら、市野瀬くんの周りにあったはてなマークが消えた。


 はてなマークは消えた市野瀬くんだけど、次は驚きの表情に変わった。


「……友達に?」


「そう」


「オレとお前が?」


「うん」


「…………」


 市野瀬くんは無言になってしまった。


 そんな市野瀬くんに私は話を続けた。


「ねぇ、いいでしょ。私と友達になることなら簡単なことじゃない」


 私はそう言って市野瀬くんのことを見続けた。