そして声が出せそうなタイミングになったら、市野瀬くんにそれを言う。
そして……。
「誰にも言わないよ」
「そうか、ならいい」
少し安心したような市野瀬くん。
「……でも」
「……?」
私が言ったことに不思議そうな顔をする市野瀬くん。
いけ‼ 杏樹‼ 今だ‼
私は自分のことを精一杯励ました。
そして私は勇気を出して市野瀬くんに話を続ける。
「タダで黙ってろって言われても……ちょっとね」
言ってしまった。
言っちゃった。
言ってやった‼
「な……‼」
私が言ったことに驚き過ぎたのか、それ以上言葉が出ない市野瀬くん。
そんな市野瀬くんの様子を見ている、私。
さあ、何て言う‼ 市野瀬くん‼
「……なんだよ、取引しようってのか?」
市野瀬くんは少しだけ動揺している様子だった。
「そんなつもりはないけど、市野瀬くんにそう思われても仕方がないかもね」
私も本当はこんなことはしたくないけど、そうまでしても市野瀬くんと仲良くしたいから。