そのとき私は、こんなことを思っていた。
いつも学校では険しい顔ばかりしている、市野瀬くん。
そんな市野瀬くんが、3歳の姪と1歳の甥の面倒を嫌な顔一つしないでみている。
幼い頃の市野瀬くんは女の子みたいに可愛くて、それもあって3人のお姉さんたちのスカートを穿かされていた。
幼い頃の市野瀬くんは、3人のお姉さんたちとよく一緒に遊んでいて、その影響もあって男の子の遊びよりも女の子の遊びの方がしっくりきていた。
市野瀬くんが読むマンガも、幼い頃から3人のお姉さんたちが読んでいた少女マンガを読んでいて、それが高校生になっても続いている。
そして幼い頃の市野瀬くんは、泣き虫だった。
幼い頃の市野瀬くんは、今の市野瀬くんからは想像もつかないくらいの市野瀬くんだった。
というよりも、今の本当の市野瀬くんも、幼い頃の市野瀬くんとほとんど変わっていないのかもしれない。
ただ、今の市野瀬くんは照れもあって少し強がっているだけ。