私も、このまま市野瀬くんのことをそっとしておこうと思った。
「でもね」
突然、架純さんが口を開いた。
「今の大翔も優しいところがあるのよ」
架純さんは、弱っている市野瀬くんをやさしい笑顔で見つめながらそう言った。
「この間、私が実家に子供たちを連れて遊びに行ったとき、大翔、ちゃんと子供たちの面倒をみてくれてた。3歳の娘と1歳の息子で、まだ手がかかるのに嫌な顔一つしないで面倒をみてくれてた大翔のことを見て、大翔の優しさを改めて感じることができたの」
「それは架純お姉ちゃんにだからだよ。私たちにはそんな優しいことしないと思うよ」
来未さんは少しだけ口を尖らせながらそう言った。
「そんなことないと思うよ。大翔は少し恥ずかしがり屋なところがあるだけ。なんだかんだ言っても最終的にはちゃんと応えてくれると思うよ」
架純さんはやさしい笑顔でそう言った。
架純さんの言ったことに対して、来未さんはこれ以上何も言わなかった。