「「一体、あの頃の大翔はどこに行っちゃったんだろうねぇ~」」


 香織さんと来未さんは声をそろえて市野瀬くんにそう言った。


 そういえば、さっきから市野瀬くんが香織さんや来未さんに反論する声が全く聞こえない。


 気になった私は市野瀬くんの方を見た。


 市野瀬くんは、もうすっかり諦めモードになっている様子だった。

 市野瀬くんは、テーブルにおでこを当てて下を向いていた。


 私は、こんなにも弱っている市野瀬くんを見るのは初めてだった。


 学校では絶対に見せない市野瀬くんの姿がここにあった。


 市野瀬くんには申し訳ないけど、こんな感じの市野瀬くんのことを見て、新鮮な気持ちになってしまった。


「「お~い、大翔~」」


 すっかり弱ってしまっている市野瀬くんに声をかける、香織さんと来未さん。


 香織さんと来未さんに呼ばれても市野瀬くんは全く反応がなかった。


「これはダメだわ、しばらく放っておこう」


 市野瀬くんがなかなか戻らない様子を見て、香織さんがそう言った。


「そうだね~」


 香織さんが言ったことに対して来未さんがそう言った。