そういえば香織さん、市野瀬くんにとって架純さんは特別な存在って言っていた。

 香織さんが言っていた市野瀬くんにとって架純さんは特別な存在というのと、市野瀬くんが架純さんの名前を聞いて動揺しているのは何か関係があるということなのだろうか。


 私がそう思っている間にも香織さんはさらに話を続ける。


「それでね、架純お姉ちゃんは大翔にとって」


「おい‼ 香織‼」


 香織さんが話している途中に、市野瀬くんが大声で香織さんの話を遮った。

 市野瀬くんがあまりにも大声を出したから、店内のお客さんたちや店員さんたちが驚いて一斉に私たちの方を見た。


「こら、大翔、そんなに大声を出したらいけないでしょ。場所を考えなさい」


 香織さんはそう言って、来未さんと一緒に店内にいるお客さんたちや店員さんたちに頭を下げた。


「だって香織が……」


 その間、市野瀬くんはブツブツと言っていた。


「別にいいでしょ、なにも恥ずかしいことじゃないんだから」


 香織さんはそう言った。


「そういう問題じゃねぇよ」


 今度は声の大きさを気にしながら話す、市野瀬くん。