「う……うるせぇ……」


 まだ動揺が隠し切れていない市野瀬くん。


 どうしたのだろう、市野瀬くん。
 架純お姉さんという人の名前を聞いたとたんに、ものすごく動揺している。
 その架純お姉さんという人と市野瀬くんは何かあるのだろうか。

 私がそう思っていると、


「まぁ、しょうがないって来未。大翔にとってお姉ちゃんは特別な存在なんだから」


 ニヤニヤしながら話している香織さん。


「まぁね」


 香織さんの言ったことに納得している来未さん。


 香織さんと来未さんの会話のやりとりが全く読めないでいる、私。


 私が香織さんと来未さんの会話のやりとりが読めないでいると、


「杏樹ちゃん」


 香織さんが私の名前を呼んだ。


 そしてこう続けた。


「架純お姉ちゃんは私たちの一番上のお姉ちゃんなの。今は結婚して一緒には暮らしていないんだけど」


 そうなんだ。架純さんは一番上のお姉さん。

 ……あれ?

 でも架純さんの名前を出して、なんで市野瀬くんはあんなにも動揺をしているのだろう。