こうして市野瀬くんと会話がないままファミレスに着いた。
店の中に入って、香織さんは店員さんに「もう一人来ます」と小さめの声で伝えた。
香織さんが店員さんに小さめの声で伝えていたのを私は、たまたま気付いた。
市野瀬くんは香織さんの声に気付いていない様子だった。
もう一人? 誰が来るのだろう。
私は、そのもう一人が気になった。
店員さんに席を案内されてその席に着いた、私たち。
私の隣は市野瀬くん。
向かい側には香織さんと来未さんが座った。
そして向かい側に座っている香織さんと来未さんは突然、少し笑顔になりながら顔を見合わせた。
「そうだ、大翔」
来未さんと顔を見合わせていた香織さんが、市野瀬くんに声をかけた。
「もう少ししたら、お姉ちゃんもここに来るから」
「……‼ えっ‼ か……架純姉ちゃんも⁉」
香織さんの言葉を聞いた市野瀬くんは激しく驚いていた。
「ちょっと大翔、あんた相変わらず架純お姉ちゃんのことだけは『姉ちゃん』って呼ぶのね。私たちのことは名前で呼び捨てのくせに」
来未さんが呆れたように市野瀬くんにそう言った。