「『なんだよ』じゃないでしょ。あんたがずっと固まってたから元に戻してあげたんじゃない」


 来未さんが少し呆れたようにそう言った。


 来未さんにそう言われた市野瀬くんは「フン‼」と言って、私たちに背を向けた。


 香織さんと来未さんは『しょうがない子ね』というような表情で市野瀬くんの方を見た。


 背を向けている市野瀬くん、そんな市野瀬くんのことを見ている香織さんと来未さんの様子を私はぼんやりと見ていた。



「あっ、そうだ」


 突然、香織さんが声を出した。


 私は突然の香織さんの声に少し驚いた。


 香織さんは突然声を出した後、私の方を見た。


「ねえねえ、杏樹ちゃん、このあと時間ある?」


 そう訊いた香織さん。


「……? はい……」


 私は、よくわからないままそう返事をした。


「このあと来未や大翔とご飯を食べる予定なんだけど、もしよかったら杏樹ちゃんも一緒にどう?」


 香織さんは笑顔でそう言った。


「それいいね」


 来未さんも笑顔でそう言った。


「え……でも……」


 せっかくの姉弟水入らずでの食事なのに、私がその中に入っていいのだろうかと思った。