少女マンガの持ち主が市野瀬くんだったということが、なんだかよくわからないけど、感激しているという気持ちが私の心の中に湧き上がっていた。
でも、その気持ちが湧き上がってきた私の気持ち、なんだかわかる気もする。
たぶん、私は嬉しいのだと思う。
普段、あんなにも悪ぶっている市野瀬くんが、実は少女マンガ好きだなんて、あまりにも可愛すぎると思ったから。
いつも冷酷でみんなから恐れられている市野瀬くんが少女マンガを読んでいる。そう想像しただけでほっこりとした気持ちになった。
「大翔ね、少女マンガを読んでるとき、すごく嬉しそうな顔をして読むのよ。それは昔から一緒」
香織さんは私にそう言った。
「そうなんですか」
市野瀬くんが嬉しそうに少女マンガを読んでいる様子を想像すると、私も嬉しい気持ちになって自然に笑みがこぼれた。
「あー、でもね、その嬉しそうな顔をしているのは少女マンガを読んでるときだけ。それ以外は超仏頂面」
来未さんが私にそう言った。
「そうなんですね」
きっと少女マンガを読んでいるとき以外の市野瀬くんは、普段、学校でよく見る市野瀬くんの表情。