香織さんと来未さんが私の耳元で話し始めたのを気付いた市野瀬くんが血相を変えた。


 血相を変えた市野瀬くんは、慌てて香織さんと来未さんのことを止めに入ろうとしたけど……。


「大翔のなの」


「あぁぁーっ‼」


 香織さんと来未さんの声と市野瀬くんの叫び声がほぼ同時になったけど、私は確かに聞こえた。


 あの少女マンガの持ち主は……市野瀬くんのだって。


 市野瀬くんが手にしている少女マンガは、香織さんと来未さんのものではなくて市野瀬くんのものだったことを私に聞かれてしまったと感じた市野瀬くんは銅像のように固まっていた。


 少女マンガの持ち主は市野瀬くんだと知った、私。

 まだ銅像のように固まったままの市野瀬くん。


 私と市野瀬くんの間には沈黙が流れた。


 そんな私と市野瀬くんのことを香織さんと来未さんは交互に見ていた。


 市野瀬くんが沈黙しているのは、おそらく少女マンガの持ち主が市野瀬くん本人だったということを私に知られてしまって、それが嫌だという気持ちからくるのかもしれない。


 でも私が沈黙しているのは、市野瀬くんの気持ちとは全く正反対の気持ち。