「オレが今、こうして持っている少女マンガは姉貴たちの物だ。姉貴たちが本屋で買って、オレは姉貴たちに頼まれて少女マンガを持たされているだけだ」
私にそう言った市野瀬くんの目力がすご過ぎて、私は圧倒されてしまった。
「……そう……なんだ……」
だからというわけではないけど、私はそう答えるしかなかった。
「……誰にも言うなよ」
「え……?」
「オレが姉貴たちに頼まれて少女マンガを持たされているということは誰にも言うなよ」
そう言っているときの市野瀬くんの目力が、さっきよりももっとすごくて、私はまた圧倒されてしまった。
「……うん……」
私は、それ以上言葉が出なかった。
「何言ってるのよ、大嘘つき」
え……?
いきなり「大嘘つき」という言葉が聞こえてきたので驚いた。
私は声がする方を見た。
すると二十歳過ぎくらいの女の人が二人立っていた。
「うわっ、何言ってるんだよ‼ 香織‼ 来未‼」
市野瀬くんは大慌てで、その女の人二人にそう言った。
え……? 香織? 来未?
市野瀬くんの知り合い?
そう思っていると……。