ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい


 店に引き返そうかとも思ったが、挨拶もしたあとなので決まりが悪い。それに店もピークタイムなのか混み始めていたし、今戻っても迷惑になるだろう。それに……。


「……いっか。〝また来てね〟って言ってたし」


 真に受けたぞ俺は。営業トークだろうけど、真に受けたぞ!

 店にとってはいいカモなんだろうなと思いつつ、カモになってやろうじゃねぇかと謎のやる気に満ち溢れていた。〝御礼がまだだ〟という口実までできて、俺は絶対にまたあの店に行くことが確定した。

 ……バイト、増やそうかな……。


「はー……」


 細く長く息を吐く。

 それと同時に、夜風に吹かれて桜の花びらが舞う。春だなぁ。

 絹さんの言ったとおりだった。酒は程よく残っているだけで、帰り道で気分が悪くなることもない。火照(ほて)った頬を夜風がゆっくり冷ましてくれる。心なしか足取りが軽い。鼻歌でも歌いたいような、そんな愉快な夜。

 そういえば、と俺はズボンのポケットからスマホを取り出し、さっき絹さんが作ってくれた酒について調べてみる。

 スクリュードライバー。
 検索するとすぐに複数のレシピがあがってきた。


「……自分でも作れんのかな」


 あの人が作ったものとまったく同じにとはいかないだろう。でもそれに似たものなら、材料と道具さえあれば、俺にも作れるのではないか。