ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい


 完全に油断していた俺は、思い出していた。今朝の強烈な苦しみの中で、俺の口の中に絹さんの指が入ってくるあの感覚を。

 そうだ。今の今まで俺の指をニギニギしていたほっそりとした指が、俺の舌を撫でていったんだ……。

 そんなの〝うわぁ〟ってなるじゃん。もう十数時間も前のことなのに、思い出して腰のあたりがゾクゾクした。別にそういう性癖はないはずなのに。

 当の絹さんはといえば、別の客に呼ばれて「はい、ただいま」と機嫌のいい返事をして、澄ました顔で俺の前からいなくなってしまった。言うだけ言っておいて。


(くっそ……)


 握られていた指が熱い。思わず口元に当てる。唇も熱い。

 指も口の中も、どっちも性感帯みたいに敏感になってしまった気がした。





 その日は結局俺の負け越しで店をあとにした。
 カクテル二杯にチャージ料金込みで合計二五〇〇円ほど。大学生には痛い出費だが、覚悟していたほど馬鹿高くはない。


「……あっ!」


 店を出て数十メートルほど歩いてから思い出した。

 今朝のカレーの代金、払ってないじゃん!
 なんなら御礼もちゃんと言ってねぇ!


「うわ……やったわコレ……」