さすがにおかしいと思ったのか、絹さんは反射的に手を引っ込めようとした。しかし俺はその手を離さず、カウンターテーブルの上で指同士を組ませて押さえるように握る。
指の股でしっかり絹さんの指を捕まえ、親指の腹で彼女の親指を優しく撫でた。労わるように。
「こんなに華奢な手なのに働かせすぎ」
「馬締くん……?」
「ハンドクリーム使ってる?」
「そりゃあ……事あるごとに塗り込んでるけど」
「バーテンダーってほんとに大変なんだな……。いつもお疲れさま」
あざとすぎるか? でも、他にないだろう。
しがない大学生の俺にある武器など、若さと勢いくらいなんだし。
絹さんは「ありがとう」と言って、初めて少し照れた笑顔を見せた。
(お?)
これは効果アリなのでは? ってかやっぱ、笑うと鬼のように可愛いな。
手を握っていることも相まって気持ちが高揚する。
もっといい感じになりたい、と欲が出る。
「どういたしまして」
俺も小さく笑い返して、働き者な手を意味深にニギニギしてみた。これで嫌がられなかったら、それはもう脈アリと判断していいのではないか。
そんな期待を寄せ、カウンターテーブルの上で絹さんの手を握っていると、指の間に振動が伝わってきた。
(ん?)
