ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい



 今度は絹さんの手をひっくり返して、手のひらを上に向けて見た。やっぱりだ。カクテルを作っているときには気にならなかったけど、こうしてまじまじと見ると彼女の手は少し荒れている。


「これ、痛いでしょ」


 手を掴んだままそう尋ねると、絹さんは更に弱った顔になる。


「あー……そうね。もともと肌が強いほうじゃなくて」
「やっぱり水仕事が多い?」
「うん。あとアレかな。仕入れで段ボールをよく触るから、手の水分奪われて乾燥しちゃって」


 ここまで絹さんの反応はずっと自然だった。俺に手を掴まれていてもドギマギした様子は一切なく、会話も淀みない。手荒れがバレてちょっとバツが悪い、程度の反応だ。

 対して俺のほうはといえば、自分から掴んだくせに、なんだか手に変な汗をかいてきた。


(なんでだよ)


 その差が無性に悔しくて、ふつふつと闘志が燃えてくる。
 絶対に絹さんをドキドキさせてやる。なにがなんでも。

 他の客からはふたりの手元が死角になっているのをいいことに、躍起になった俺は掴んでいた彼女の手をぎゅっと握った。


「えっ?」