絹さん攻略の糸口を見つけた俺は、彼女の手がすくタイミングを見計らって話しかけた。
「なんか、大変そう」
ちょうど再び俺の席の近くまで来て、洗い終えたグラスを磨いているところだった。絹さんは急に話しかけられることにも慣れた様子でにこっと感じよく微笑み、布巾を持つ手でグラスを磨きながら俺に体を向ける。
「大変そうって、私のこと?」
「そうだよ」
「まあ……ラクではないけど」
ぽろっと聞こえた本心に手応え。〝これはいけそう〟と勝機を見出した俺は、この話題を掘ろうと決める。
「さっきからずっと立ちっぱなしじゃん。バーテンダーってやること多くて忙しいんだな」
「よく見てるね」
「うん。ずっと目で追ってたから」
その言葉はジャブのつもりだった。〝お持ち帰り〟よりはもう少し本気な、ちょっと攻めたアピール。
絹さんは照れるか、「冗談言わないで」と言って茶化すか、それとも反応ナシか。内心ドキドキしながらリアクションを待っていると、彼女は眉を八の字に下げて困ったように笑った。
「そう……慌ただしくしないように気をつけてたんだけどなぁ。見抜かれちゃうなんて私もまだまだね」
「あっ、いや」
そんな風に思わせたかったわけではなくて。
