言われてみれば確かに、思い当たることがいくつかある。漠然と〝苦手だ〟と思っていた奴が、サシ飲みすると〝意外と気が合うな〟と思ったり。
いつも底抜けに明るい奴も、酒が入るとまた別の顔を見せて、〝意外なことに悩んでるんだな〟と発見があったり。
「でもそういう楽しい時間も、記憶が飛ぶほど飲んだら忘れてしまうから。あんな風に翌朝酔い潰れてたんじゃ、せっかく友達と話した内容もよく思い出せないじゃない」
「うっ……」
耳が痛い話だ。今朝アスファルトの上に這いつくばっていた俺は、昨日の夜のことなどまるで憶えていなかった。
でも、きっとあったはずなんだ。酔っぱらって馬鹿騒ぎをしている中でも、誰かが本音で語った言葉や、心を通わせるためのやりとりが。どこかには。
「その場の会話や空気をきちんと記憶にとどめて楽しく夜を過ごすには、スクリュー・ドライバーくらいのお酒がちょうどいい。――と思って、馬締くんに出してみたのでした~」
「……なるほど」
あらためて手の中のグラスの中身を見る。
オレンジ色の中を氷がゆらゆら揺れる。
言葉尻こそ軽かったが、絹さんは思っていた以上に真剣に〝今の俺が飲むべき酒〟を考えてくれていた。なんだかくすぐったくて、同時に、言われたことがストンと心に落ちる。
