八分目まで注ぐと、今度は細く長いスプーンを取り出した。そのスプーンも不思議な形をしていた。絹さんが下に向けているほうの端はスプーンになっているが、もう片方の端はフォークの形。
彼女はその柄の中央を中指と薬指で挟むような持ち方をした。他の指は添えるだけ。
逆の手でグラスの底をしっかりとカウンターテーブルに固定し、グラスの縁沿いにそろりとスプーンをグラスの中に沈める。グラスの内側をなぞって円を描く。
まるで魔法の儀式かのような、神秘的な所作。
静かすぎて驚いた。
グラスも、氷も、スプーンも。音がしそうなものばかりを使っているのに、信じられないくらい音がしない。
(うわ……)
俺は目が離せなかった。主役となるカウンターテーブルの上の酒を照らす明かりの向こう側で、粛々と、流れるような手捌きでカクテルを作る絹さん。寸分の狂いもなく、少しの惑いもない。その姿は言うまでもなく綺麗だ。
見ていて、ちょっと涙が出そうになるくらい。
(……キモいな俺)
自分でもそう思うけどさ。
本当に綺麗だと思ったんだ。
