ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい



 オーダーを受けてからの絹さんの動きは速かった。背の高いグラスと一本の酒瓶をピックアップすると、彼女は手早くグラスの中に氷を入れた。酒瓶のラベルには〝VODKA〟の文字。


(一体どんな酒を……)


 自分で頼んでおいてなんだが、〝今の俺が飲むべき酒〟ってなんだ。

 好みも何も言わずに全部丸投げのオーダー、普通なら嫌がられるよな……と後から冷静になって思った。絹さんは店と客の関係だから、嫌な顔せず作ってくれるだけかもしれない。

 悪いことをしてしまったという気持ちが少し。けれどそれを差し引いてもなお、俺には魅力的な思いつきだった。絹さんが俺のことを考えながら作ってくれる一杯は、どれだけ美味しいだろう。


 彼女はどこからか、真ん中の部分がくびれた砂時計のような形状のカップを取り出した。それを指で押さえ持つのではなく、くびれの部分を中指と人差し指で挟んで浮かせている。その持ち方に漠然と〝プロっぽいな~〟と思う。

 絹さんはそこに酒瓶の中の透明な液体をゆっくり注いだ。カップの縁ぎりぎりのところでピタッと止めると、手首をくるっと返して中身を静かにグラスの中へ。


(あれで酒の量を計ってんのかな)


 続いてオレンジ色の――オレンジジュースだろうか? 今度は砂時計のカップを使うことなく、それを直接グラスの中へ。