「バーにはよく来るんですか?」
――きた!
俺は想定していた質問に対し、嘘っぽくならないようにわざと気の抜けたトーンで答える。
「まあ、たまに? いっつも居酒屋とかクラブで飲んでばっかだからさ。たまにはこういうお店でしっぽり飲むのもオツかな~、みたいな」
嘘だ。〝たまに〟も何も、こんな本格的なバーに来るのは初めて。〝今晩行く〟と決めてからネットでめちゃくちゃ予習したけど、そんな格好悪いことまで打ち明ける必要はない。ただでさえゲロ吐いて格好悪さMAXの状態からスタートしてるんだから、勘弁してくれ……。
絹さんは曇りのない目で、俺の言葉を疑いもせず頷く。
「なるほど。今朝あんなに辛い思いをしておいて……」
「ん?」
「またすぐ飲みに来るなんて、馬締くんはよっぽどお酒が好きなのね」
「……ははっ。うん、大好きー」
思わず乾いた笑いが漏れた。
(んなわけねーだろ)
酒なんか当分いらないと思ってたよ。まだ微妙に気持ち悪いし、本当なら今日は一日家に籠もってダラダラと体から酒を抜くはずだった。誰のせいでこんな衝動的に行動したと思ってるんだ。
自分のせいだとは到底思っていない絹さんが、小首を傾げて俺をたしなめる。
「あんまり飲みすぎちゃダメですよ」
うるさい。馬鹿。
……可愛い。もう一杯ください。
ゆっくり飲むはずのグラスホッパーを、俺は一瞬で飲み干してしまっていた。
