俺の注文を聞いていた隣のOLふたりが揃ってニヤッと嬉しそうにする。黒髪ロングのほうが「真似されちゃった~」とおどけて言うので、俺はそれに「美味しそうだなと思ってて!」と同じくおどけて答える。
実は先客がいるのを確認した段階で決めていたのだ。注文を訊かれて優柔不断を発揮していたのでは格好がつかないから、「あのお客さんと同じのを」って注文をするって。
絹さんは「かしこまりました」と言ってカウンターの中へ戻っていった。絹さんの接客用の話し方、やっぱりめっちゃいい……。もっと言ってほしい。
もうお気付きのことだと思うが、〝今朝の御礼をしたい〟というのは完全なる建前(たてまえ)だ。朝のあの一件ですっかり絹さんの虜になっていた俺は、なんとびっくり、どうにか彼女と交際できないかと考えた。
〝あれだけ迷惑をかけておいて?〟って思うよな? 俺もそう思いました。あれだけのマイナスからそうそう挽回できるはずがないし、口説くにしてもちょっと時間を置いて、彼女の中から格好悪い俺の記憶が薄れた頃にすべきだ。
俺もそう考えました。
