対して絹さんはきょとんとしていた。「そう?」と可愛く首を傾げて。
「馬締くんも、今朝とは雰囲気が違うね」
「えっ」
「今朝は〝学生さん〟って感じだったけど、今は……大人っぽくて格好いい。そのジャケットもよく似合ってる」
「っ……!」
えっ……なになになに!?
一度にいろんなものを撃ち込まれすぎて混乱した。名前憶えててくれたんだ!? 期待していなかった上に、絹さんから呼ばれるのは初めてで破壊力が大きかった。
更には「大人っぽくて格好いい」という殺し文句。あと〝ジャケットが似合ってる〟って言った? そんなんもう一生このジャケットを着回すわ……。
(落ち着け……)
ほんの短いやりとりで爆上がりしてしまったテンションを、どうにかこうにか抑えつける。悟られてはダメだ。こんなに舞い上がってるなんて知られたら、絶対に〝子どもだな〟と思われる。
俺は嬉しい気持ちをぎゅうぎゅうと心の奥底へと押し込み、「でしょ~!?」とノリよく返す。大丈夫です絹さん。俺、大人のリップサービス理解できます!
キリッと気持ちを切り替えて〝こなれた大学生〟に擬態する。
「ご注文はお決まりですか?」
「はい。そっちのお姉さんと同じ、グラスホッパーをひとつ」
