ヘタレな俺はウブなアラサー美女を落としたい



 対して絹さんはきょとんとしていた。「そう?」と可愛く首を傾げて。


「馬締くんも、今朝とは雰囲気が違うね」
「えっ」
「今朝は〝学生さん〟って感じだったけど、今は……大人っぽくて格好いい。そのジャケットもよく似合ってる」
「っ……!」


 えっ……なになになに!?

 一度にいろんなものを撃ち込まれすぎて混乱した。名前憶えててくれたんだ!? 期待していなかった上に、絹さんから呼ばれるのは初めてで破壊力が大きかった。

 更には「大人っぽくて格好いい」という殺し文句。あと〝ジャケットが似合ってる〟って言った? そんなんもう一生このジャケットを着回すわ……。


(落ち着け……)


 ほんの短いやりとりで爆上がりしてしまったテンションを、どうにかこうにか抑えつける。悟られてはダメだ。こんなに舞い上がってるなんて知られたら、絶対に〝子どもだな〟と思われる。

 俺は嬉しい気持ちをぎゅうぎゅうと心の奥底へと押し込み、「でしょ~!?」とノリよく返す。大丈夫です絹さん。俺、大人のリップサービス理解できます!

 キリッと気持ちを切り替えて〝こなれた大学生〟に擬態する。


「ご注文はお決まりですか?」
「はい。そっちのお姉さんと同じ、グラスホッパーをひとつ」