結果的にたいした会話もできないまま、俺は部屋の中央のカウンター席へ案内された。グラスホッパーを注文したOLふたり組から、ひとり分の席を空けて奥側。促されるままそこに腰掛ける。
「おしぼりです」
「ど……どうも」
……さっきからそれしか言ってないぞ、俺!
熱いおしぼりを受け取りながら〝何か自分から話さないと〟と思うものの、絹さんの新鮮な姿が気になってそっちを見ることに集中してしまう。
後ろでしっかりまとめられている髪。パッチリした瞳に、凛々しくて知性的な顔立ち。そのすべてに、バーテンダーの制服が似合いすぎている。
綺麗。格好いい。……ダメだな、語彙力がない。
それでも何か言わなくちゃ。
「ぜっ……」
「え?」
「全然今朝と雰囲気違いますね! 別人みたいでびっくりした~!」
……違うだろ俺! もっとなんか……なんか、他にあるじゃん! こんなにドキドキしてるんだから、そこを褒めればいいじゃん! ストレートに見た目を褒めれば、女子は喜ぶんだし……。
今まで合コンやクラブで獲得してきたスキルが一切活きていないセリフに、自分の中でダメ出しが止まらない。
