絹さんはそれをカウンター席にいる黒髪ロングの女性客の前に静かに置いた。
「グラスホッパーです」
あの緑色の酒は〝グラスホッパー〟というらしい。……グラスホッパーってなんだっけ? なんか聞いたことがあるな。映画のタイトルだったか、本のタイトルだったか。
カウンター席に座っていた女性客は仕事帰りのOLふたり組で、もうひとりのボブカットの女性が「わぁ」と物珍しがる声をあげた。
「色もグラスも可愛い!」
「グラスホッパーはね、〝バッタ〟って意味なんだって」
「バッタ~? バッタって、虫のバッタ?」
「そう」
バッタか。そういえばそうだったかも。
グラスホッパーを注文した女性のほうには少し知識があるらしい。彼女はグラスの脚の部分を持ち、グラスの中身を小さく回しながらうっとりした顔で話す。
「綺麗な緑でしょ? ミント・リキュールが入ってて爽やかないい香りがするの。そこに生クリームとカカオ・リキュールが入ってて……」
「え、何それ美味しそう! ひと口ちょうだい!」
「どうぞ」
