外はまだほんのり明るさが残っている。早朝と違って人通りも多い。春の少し肌寒い風が吹く中、店を眺めていて感じたのはクッッッソお洒落だということだ。
……こんなんだったっけ!?
店が雑多に立ち並ぶ中でこの一角だけ雰囲気がヨーロッパ。アイボリーの土壁に、綺麗に手入れされた蔦とバラが伝っている。それが左右のスポットライトで下から照らされていて、なんだか建物自体がひとつの美術品みたいだ。
窓がなく、唯一中の様子を窺えるのは重厚なドアについている四角い磨りガラスのみ。そこからちらっと中を覗くと、絹さんの姿は見えなかったが、カウンター席に数名、客の姿が見えた。
(開店してまだ三十分しか経ってないのに……)
先客がいることに更に緊張を募らせつつ、重厚なドアに付いた縦長のステンレス製ハンドルを握る。最初に訪れたときは絹さんに開けてもらったので気付かなかったが、入口の扉はかなり重たい。
そしてひとたび中に足を踏み入れると、広がっていたのは一種の異世界だった。一瞬前の街の雑踏とは明らかに空気が変わった。落とされた照明。ウッド調の内装の温かみのある雰囲気。扉を閉めると外界の音は一切遮断され、代わりに聞こえるか聞こえないかの絶妙なボリュームの音楽。
