どんな顔の子だったかなと、朧げな記憶を引っ張り出して返事の内容を考えようとしたが、ダメだった。文面が何も浮かんでこない。なぜなら俺の頭の中は、あの人のことでいっぱいになっているからだ。結局何も返事を打たないままスマホを放り出した。
記憶にこびりついている。他のことを考えようとしても脳裏にチラつく。あの、彼女が少し動くたびに揺れるグレージュの髪の毛先と、伏せられた目と、形のいい唇。それから、甘くスモーキーな林檎の匂い。
考えるだけで息苦しくなる。心臓が痛いほど早鐘を打って。
初めての感覚に、俺はもう確信していた。
(……まさかあんなところで)
人並みに恋をしてみたい気持ちはずっと持っていた。大学ではサークルに入って人付き合いが増えたし、出会いを求めて合コンにもたくさん参加した。クラブにだってかなり通って、女の子の喜ばせ方もそれなりに覚えた。
だけど。
「……アーッ!!」
顔を両手で覆って天井を仰ぎ、叫ぶ。経験のない感情を抱えきれずに。何かに洗脳されてしまったような気分だ。なんっっなんだよこれは……!
