カレーを食べる手は止まらなかった。掛け値なく美味しい。でも、彼女を見ることもやめられなかった。結果として俺は彼女と見つめあいながらカレーを食べることになる。
美人で世話焼き。信じられないくらい優しい。美味しいカレーが作れる。あと燻製に詳しい。まだ謎だらけの彼女の、知っていることだけ頭の中に並べ立てた。それだけで、俺が彼女に好意を持ってしまったことは明らかだった。
彼女はまだ俺のことを見つめている。ともすればこちらがうっとりしてしまいそうなほど綺麗な顔面で、満足そうに俺のことを見ている。このままでは緊張でカレーが喉を通らなくなると思い、俺は話題を探して口を開いた。
「なっ……名前っ!」
「名前?」
「俺っ……馬締純一、です」
彼女はカウンターに頬杖を突いたまま、目を丸くして「ああ」と相槌を打つ。今のが自己紹介だったと理解して、俺を見たままにっこり笑う。目を細めるのに合わせて自然と上がった口角に、俺の目は釘付けになる。
「篠森絹です」
