黙ったまま心の中で「あー……」とじっくりひと息つき、更にもうひと口。程よく辛くてサラサラのカレーが五臓六腑に沁みわたる。荒れていたであろう胃が優しく包まれていくような。実際に体は温まっていた。
ひと口。もうひと口。更にひと口。止まらなくなる。刺激的なスパイスの香りと味が、さっきまで地の底に落ちていた俺の自己肯定感を蘇らせる。
ご飯が食べられる! 顔から汗が噴き出してくる。
それも、生きているという感じがする。
「美味しそうに食べるね」
「うっ……美味い! です!」
気付けば夢中になってカレーを食べていて、彼女に感想を言うことも頭から抜けてしまっていた。しなびた植物に水を注ぐように、空っぽになっていた俺の胃にカレーを注ぐ。生き返った気分だ。
俺が「美味い」と言ったことに気をよくしてか、お姉さんは更に口角を上げた。笑い方が格好いい。年を重ねればこんな笑い方ができるようになるんだろうか。でも、やっぱりそこまで年が離れているとも思えない。
「鶏肉も食べてみて」
「あ、うん」
言われるがまま、サラサラのカレーの中に浮かぶ鶏肉をスプーンで掬う。ひと口大に切られた飴色の鶏肉を口の中に運んだ瞬間、口の中に、カレーとはまた違う独特の味が広がった。
